遥か彼方、銀河系の中央に一つの星があった。そこに住まう生命はすべて「光の化身」であり、多大なる神通力を持っていた。彼らは仏教における観世音菩薩のように、各々が念じるままに千手千眼を現じることができた。
その星を統治する国王の名は「多宝如意王(たほうにょいおう)」といい、彼には「大悲(だいひ)」という名の娘がいた。
ある日のこと、王は大悲を宝殿に呼び寄せ、こう告げた。「娘よ、あと六日で父は百万歳の誕生日を迎える。その日に王位をそなたに譲りたいのだ」
それを聞いた大悲は困惑の表情を浮かべ、答えをためらった。多宝王は不思議に思い、「大悲よ、何か悩み事でもあるのか?」と尋ねた。
大悲は父王の前に跪き、こう言った。「父上、下されたご決定に従うのは喜ばしいことですが、私を悩ませているのは別の事柄です。十日前に父上が惑星Aへ派遣された救援隊から、ここ数日頻繁に通信が入っております。惑星Aの環境はもはや彼らが生存できる状態ではなく、帰還を望んでいますが、彼らの中にはもはや帰り道を知る者がいないとのこと。どうか父上、彼らを導く案内人を遣わしてください」
多宝王は沈思黙考し、こう言った。「惑星Aの毒気がこれほどまでに増しているとは。我が子よ、前回派遣した救援隊には『多力(たりき)』と『多智(たっち)』という二人の有能な将がいたが、彼らでさえ毒気に抗えず、方向を見失ってしまった。今さら誰を案内人として遣わせばよいというのだ?」
「父上、私は二百年前にその星を訪れたことがあります。あの星路(ほしろ)ならばまだ覚えております。私が王位を継承する前に、彼らを迎えに行かせてください」
多宝王は首を振り、「娘よ、今のあの星の環境は二百年前とは一変している。この数日、私も注視していたのだ。そなたに与えられた時間は六日しかない。入り口である『欲の河』を越える際、そなたは三日間昏睡するだろう。つまり、救援隊を捜す時間は実質三日しかないのだ。あの星は幻影に満ち、さらに降り立てばそなたは光の化身としての姿を失い、神通力も失われるのだぞ」
大悲は懇願した。「父上、私が行かなければ、彼らは永遠に近い時を迷い続け、祖国へ帰ることはできないでしょう。私は自分の能力を信じています。三日あれば十分です」
多宝王はしばし考え、「よかろう、大悲。六日後、救援隊を見つけようと見つけまいと、速やかに戻ってくると約束しなさい。そなたの旅を助けるため、いくつかの宝物を授けよう」と言った。
多宝如意王が空中に手を伸ばすと、燦然と輝く一顆の珠(たま)が現れた。「我が子よ、これは我が国の鎮国之宝、『摩尼宝珠(まにほうじゅ)』だ。これをそなたの胸の内に授けよう。たとえあらゆる毒に侵されようとも、そなたは知恵を失わず、家への道を見失うことはない」
王が再び空中に手を伸ばすと、宇宙のあらゆる光を吸収するような小さな鏡が現れた。その鏡面はブラックホールのように底知れぬ深淵を湛えていた。
「これは『天目神鏡(てんもくしんきょう)』だ。これを後頭部に置きなさい。そうすれば、救援隊員たちがどのような姿に変貌していようとも、そなたは彼らを見分けることができる。そして、これは『解毒丹』だ。毒が深く回りすぎた時、これを少し飲めば一時的に苦痛を和らげることができよう」
大悲は宝物を受け取り、父王に礼を述べると、そのまま宮殿を去り「宇宙大観室」へと向かい、惑星Aの記録を確認した。
宇宙大観室には巨大なスクリーンがあった。大悲がそれを開いて詳しく検索すると、惑星Aが映し出された。
解説の声が響いた。「惑星A、別名『宇宙幻城』。この星は二つのエネルギー体から成り、一つを陽エネルギー、もう一つを陰エネルギーと呼ぶ。陽の中には陰があり、陰の中には陽があり、それらは互いに転換し続ける。ゆえに、この地の生命は複雑であり、男と女に分かれ、善悪の入り混じった性質を持つ。生命の意識は幻影の中で揺れ動き、その肉体は快楽と苦痛の間を漂っている」
「この星には『貪(むさぼり)、瞋(いかり)、痴(おろかさ)、慢(おごり)、疑(うたがい)』という五つの猛毒があり、これらが諸々の幻境を作り出し、生命をそこへ閉じ込め、自力では抜け出せなくしている」
「これらの毒はすでに生命の細胞や骨髄の隅々にまで入り込んでいる。我が国が派遣した救援隊員もほぼ例外なく、この毒の依存症に陥ってしまった。毒は彼らの心にある識別装置を蝕み、帰り道を見失わせているのだ」
解説がそこまで達した時、スクリーンの下の赤いランプが激しく点滅した。解説員が直ちに警告を発した。「救助を求める声があります。我々が派遣した救援隊員です」
大悲はアラームを止め、解説員は話を続けた。「ここの生命体は、毒に侵された深さによって寿命が異なる。一つの形態としての寿命が尽きると、彼らは五毒が作り出す幻影への執着ゆえに、また別の生命形態へと転生していく」
「彼らは輪廻を繰り返し、毒は深まり、苦痛と悩みは増え続ける。このままでは、彼らは毒の力で麻痺し、真の苦しみも喜びもわからなくなり、善悪の区別さえつかなくなる。多くの生命はすでに基本的な鑑別能力さえ失い、その状況は悪化し続けている……」
解説に合わせてスクリーンには、毒の禁断症状に苦しむ生命の姿が映し出され、大悲の目からは涙がこぼれ落ちた。彼女は通信機に向かって叫んだ。「救助の方法を教えてください。そして、我々の救援隊員が今どこにいるのか、その位置を示してください」
「救助の方法はこうだ。我々の救助は、主に『人間』と呼ばれる生命形態に対して行われる。この生命体の身体には『我執(がしゅう)』という装置があり、これは異常に強固で壊れにくい。しかし、二つのものだけがこれを溶かすことができる。一つは『功徳水(くどくすい)』、もう一つは『普愛(ふあい:あまねき愛)』である。この我執が溶ければ、彼らは毒に侵されていても苦痛を感じなくなり、即座にあらゆる幻影から解き放たれ、我々と同じ光の化身へと変わることができる」
「その二つはどうすれば手に入るのですか?」と大悲が問うと、解説員は即座に答えた。「それらは共に、この星の中で生み出される。この星の住人が一つの善念を抱くか、一つの善行を積めば、空中に一滴の『功徳水』が結ばれる。この星には『万手万眼神人(まんじゅまんがんしんじん)』という存在がおり、彼は生成された功徳水を宝器の中に蓄えている。その水が満たされた時、神なる光『普愛』が生じ、功徳水と共に生命の身体に注がれる。それを受けた者は瞬時に我執が消え去り、あらゆる悩みから解脱して光の化身となる。救援隊員はその光の化身たちと共に、我が多宝国土へと帰還するのである」
「万手万眼神人にはどこで会えますか?」
「彼を見つけるのは容易ではない。彼はこの星の東にある『自性山(じしょうざん)』の頂に住んでいるが、山への道はなく、常に霧に包まれている。宝器の功徳水が満ち、彼が『普愛』の光の中に姿を現さない限り、拝むことはできない」
「生命センサーで多力と多智の位置を特定できますか?」大悲が問うと、無数の検索信号がスクリーンを走り、ある地点で赤い信号が灯った。
「見つかりました!」解説員の熱を帯びた声がした。「この星には五毒による境界の他に、二つの幻境がある。一つは自性山の麓にある『魔幻境』、もう一つは自性山の中にある『仏幻境』。多智は『仏幻境』に迷い込み、多力は『魔幻境』に……彼らは神人を捜すうちに、これらの境界に囚われてしまったに違いありません」
「わかったわ。入り口はどこ?」
「『欲の口(よくのくち)』、陰の極みと陽の極みが交わる中心にある」
「同じ道を通って帰ってこられるの?」
「不可能だ。出口は自性山の頂にある」
「生命センサーを準備してください」
しばらくして侍者が小さな緑色の箱を持ってきた。大悲がそれを胸に当てると、一筋の電光が惑星Aへと射出された。